【事業承継4つの形 その4】廃業とは

基礎知識

経営者がこれ以上その役割を続けていくのは難しいと引退を考えたときに、自らが創業し育ててきた事業を「後継者へ引き継ぎたい」「承継し将来にわたり存続させたい」と考えるかもしれません。

しかし、適当な後継者が身内や知り合いに見当たらない、M&Aで事業を売却できる見込みもないような場合は、廃業、つまり自らの意思で事業をたたむことも選択肢に上がるでしょう。

廃業は、その響きこそ未来志向ではありませんが、倒産と違い、これまでの取り組みに正当な評価をもって区切りをつける、経営者の第二の人生に向けた前向きな取り組みという捉え方ができます。

ただ、廃業はいま動いている事業を止めてしまうわけですから、周囲への影響が大きく、事業承継同様、十分な事前準備が必要です。

今回は、事業承継に悩む経営者にとって廃業とは何か、どのように進めればよいか、実現のために考慮すべきポイントについて解説します。

廃業とは

廃業とは経営者自らの意思で事業を止めることをいいます。会社の債務が支払えなくなる破産状態、それを含め経営者の意思に関係なく事業を停止せざるを得ない、いわゆる経営破たんとは異なります。

事業の終わらせ方 廃業と経営破たん、倒産、破産の違い 

倒産は正式な法律用語ではありませんが、一般的には取引先や金融機関、従業員等に対する会社の債務について支払いが滞り、事業運営が続けられなくなった状態をいいます。

また、経営破たんも経営が悪化して事業が回らなくなった状態を指し、倒産とほぼ同じ意味で使われます。倒産時の対応のうち法的なものの一つとして破産法による破産があります。

破産は清算型の倒産処理とされ、債務の支払いが不可能な場合に裁判所の介入の下、具体的には裁判所が選任する破産管財人により資産の換価(現金化すること)や債権者への配当を行い、事業を消滅させることをいいます。

一方で廃業も事業が消滅する点では破産と同じですが、必ずしも経営悪化を前提にしたものではありません。事業運営が堅調であっても、事業を任せる後継者が見つからない、余裕をもって引退後の準備をしたいなどの理由から、廃業は経営者の選択肢となり得ます。

廃業は具体的には解散と清算というに手続きにより行われます。

廃業の注意点

事業運営が堅調な企業にとっても選択肢となる廃業ですが、実施するにあたっては次のような点に気をつける必要があります。

会社の事業は周囲との様々な関係の中で成り立っています。廃業で事業を止めてしまうということはその周囲との関係が断ち切られることを意味します。また、事業で使用してきたヒト・モノ・カネを清算することにもなります。

雇用していた従業員は働く場所を失うことになります。会社がこれまで築いてきた取引先や得意先との関係もなくなり、会社が属するサプライチェーンは機能しなくなるでしょう。会社で育んできた技術やノウハウ、そういったものを背景としたブランドもそこで途切れてしまうことになります。

廃業では会社の資産を処分する必要があります。事業で継続的に利用し収益が上がることを前提とした、いわゆる「のれん」を加味した高い評価ではなく、廃業を前提として単に現金に交換する処分価格、場合によれば帳簿価格を下回る価格で売却することを強いられます。

帳簿上で借入金や買掛金等の負債を資産の価値が上回っていたとしても油断できないということです。中小企業では経営者が会社の借入金を個人保証していることがよくありますが、債務を弁済できなければ、廃業後も返済だけ続けていかなければならないということになりかねません。

さらに、廃業に際してはいわゆる撤退コストがかかることを忘れてはいけません。手続きを依頼する専門家への報酬、オフィス等施設の原状回復費用、什器や備品等の廃棄費用、登記費用、法人税・所得税等も予め見込んでおく必要があります。

別の観点では、廃業しようとする会社を食い物にする「整理屋」と呼ばれるような存在に気をつける必要があります。

例えば、廃業しようとする会社に乗り込み、コンサルタントとして手数料を取りながら、金融機関や取引先への支払いを停止させます。その後、法的整理手続きもせず放置するような手口で、会社の社会的信用を悪用し資産を取り上げるケースが見られます。

廃業にむけて関係者への対応と資産の整理

廃業手続きを進めていく上では社内外への十分な配慮が必要です。資産の換価作業を進める上でも会社が築いてきた取引先等との良好な関係が重要になります。

取引先への対応

取引先に対しては廃業の半年から一年前までに廃業することを伝えるのが一般的です。廃業することについての謝罪とともに、これまでの支援に関する感謝と廃業の意思を明確に伝えることが重要です。

今後も事業を継続する取引先にとっては、経営者の会社に代わる取引先を見つけるなどサプライチェーンの見直しや新たな取引体制の準備が何より大切なためです。取引関係が長ければ長いほど、取引量が多ければ多いほど、優先的にまた経営者が直接出向き、廃業を伝えることが望ましいといえます。

商品やサービスの販売先に関しては通常どおり確実に売掛金を回収することを優先事項とすべきでしょう。その上で経営者の会社に代わる商品やサービスの提供元を紹介することは販売先の負担軽減につながります。

経営者の会社が例えば、製造業であれば製品の修理等のアフターサービス、継続サービスの提供会社であればその継続といった対応が販売先には必要になるためです。加えて会社が持つエンドユーザー等の顧客リストを販売先に引き継ぐことで影響は最小限に抑えられます。

仕入先に関しては買掛金の支払いを通常どおり継続することを伝え、了解してもらうことが大切です。仕入先にとっては販売先が減る一大事です。

可能であれば別の販売先を紹介するなどの配慮が望ましいですし、経営者の会社のための特注部材等がある場合は仕入先から会社が引き取る必要もあるでしょう。

従業員への対応

廃業により働く場所を失う従業員にとってはその影響の大きさは明らかです。廃業に向けた準備を進めるためにも、従業員には事業を停止する当日まで会社で働いてもらうことが何より重要です。

従業員向けに説明の場を持ち、従業員への感謝、廃業を検討した経緯、資金繰りや取引先との関係といった経営状況、廃業までの処遇や退職手続きといった事項について丁寧に説明する必要があるでしょう。

廃業における解雇では、解雇予告通知は少なくとも30日前までに行い、会社都合の退職にする必要があります。また、これは経営者の義務ではありませんが、同業者、取引先等に再雇用の協力をお願いすることも検討すべきでしょう。

その他(金融機関等)

借入金等返済できる見込みがあれば金融機関は廃業について問題視するようなことはありません。ただ、個人的な取引や再度起業する場合もあるでしょうから、タイミングを計って伝えます。

オフィスや店舗を賃借している場合や製造機械や社用車をリースしている場合など、廃業に伴い賃貸借契約やリース契約を解除して、物件の明け渡しや返却が必要になります。

契約に従った手続きや違約金や残リース料等の支払いが発生しますので、予め契約の内容を確認しておきましょう。また、廃業したとしても、社会保険料や法人税、消費税等の滞納は最終的に責任を免れませんので慎重な対応が必要です。

資産の処分・換価

廃業を円滑に進めるため資産はできるだけ高く換価しなければいけません。売掛金等債権は上述のとおり販売先との良好な関係の中で回収することが換価の観点でも大切です。

在庫や設備等の有形資産の処分方法としては得意先に値引きして販売する、仕入先に買い戻してもらう、同業者等に転売する、リサイクルショップに売却する、廃棄するなどが考えられます。

有形資産についてもやはり取引先や同業者との良好な関係を前提に処分することが効率的といえます。

会社の解散・清算手続き

会社が廃業する場合、解散と清算の手続きを取ります。解散は会社の法人格を消滅させる手続きをいい、清算は会社の債権債務を整理し決まりをつけることをいいます。

解散だけでは会社は消滅せず、清算が結了する(終わる)までは存続することになります。中小企業で経営者が会社に貸付しているような場合、これらの手続きを完結していなければ、貸付金が相続財産にカウントされてしまうことにもなりかねません。

会社を消滅させるということ 

事業を休止している会社や解散後に清算手続中の会社は世の中に多数ありますが、いずれも法律上は存続しています。会社を消滅させるにも解散後の公告や登記等費用がかかるため、事業を休止しても何もしないまま、いわゆる休眠会社として放置されることが少なくありません。

事業を行っていない会社であっても、存続している限りは課税されますし、確定申告の義務もあります。

法律上、休眠会社とは最後の登記から12年が経過している会社のことをいいますが、休眠会社を解散したものとみなす「みなし解散」の定めがあります。

法務局は毎年職権により、役員変更等の登記または事業を廃止していない旨の届出をしていない休眠会社を「みなし解散」として処理しています。

解散とは

解散とは事業を停止し、法人格を消滅させる手続きです。会社法では会社の解散原因の定めがありますが、通常は「株主総会の決議」を理由として解散しますので、株主総会での特別決議で承認を得て、法務局で登記することを指します。

清算とは

解散しても、会社の資産と負債はそのままです。会社は解散後、基本的には清算をしなければなりません。清算は会社資産を換価し、その資金で債務を弁済することをいいます。つまりは会社自体を現金化する作業といえます。

清算には通常清算と倒産手続きの一種である特別清算がありますが、債務を弁済できる見込みの下では通常清算の手続きを取ります。通常清算では株主総会で新たに選任された清算人が有形資産を処分、債権を回収した上で、その資金で債務を弁済し、余った現金(残余財産)を株主に分配します。

解散・通常清算 手続きの流れ 

(関係する専門家、税務、費用などの説明も含む)

通常清算の手続きの流れは以下のとおりとなります。清算が結了してはじめて会社が消滅することとなります。

①解散…株主総会特別決議で会社の解散を決議

②法人の解散・清算人就任の登記

③解散公告の開始…2か月以上の一定の期間内に会社の債権者に対しその債権を申し出るべき旨を官報に公告(会社に知れたる債権者に対しては各別に催告)

④債務の弁済…商品在庫等資産を売却、売掛金等債権を回収した上で、債務を弁済

⑤残余財産の分配…全債務を弁済し残った現金を株主に分配

⑥清算結了…株主総会で決算報告書を承認

⑦清算結了登記

税務では、期首から解散日までの解散事業年度、解散日の翌日から清算中1年間の清算事業年度、残余財産が確定する日までの残余財産確定事業年度、それぞれについて法人税と地方税、消費税の確定申告が必要になります。

解散から1年経たないうちに残余財産が確定するケースが多く、その場合は解散事業年度と残余財産確定事業年度について確定申告を行うことになります。

費用面についてはまず、登記に係る登録免許税として、解散登記で30千円、清算人登記で9千円、清算決了登記で2千円の計41千円を負担しなければなりません。

その他、官報公告や厚生年金保険や雇用保険等の廃止手続き等必ず実施するものに掛かる費用として100千円内外の負担があります。廃業の手続き全体では、これらに登記や税務を専門家に依頼した場合の報酬や賃借していたオフィス等施設の原状回復費用等いわゆる撤退コストが上乗せされるため、見込みを立てておくことが重要です。

まとめ

廃業は周囲の理解を得て、必要な手続にのっとり進める必要があります。

従業員や取引先等への影響を考えながら進める作業が円滑に運ぶかどうかは、どのように周囲と関係構築してきたかなど、これまでの事業運営が試される場面でもあります。まさに経営の総決算と言っても過言ではありません。

有終の美を飾るためには周到な準備が必要であり、場合によっては社外の専門家の力も借りなければならないでしょう。

廃業も相応の時間と費用を要する手続きになりますので、今後の選択肢とするのであればその内容をしっかりと理解することが望まれます。

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