【事業承継4つの形 その2】社内(親族)承継とは

基礎知識

社内承継とは、会社に在籍する従業員や経営者の親族に、後継者として事業を継いでもらうことをいいます。前者を従業員承継、後者を親族承継といいます。

社内承継は、会社のことをよく知る後継者に事業を引き継ぎます。ぐため、また、実際にも後継者を選び、その後継者に経営権を渡すだけですのであるため、社内承継は経営者にとって将来のイメージが湧きやすい、最も一般的な事業承継の方法といえます。

従業員承継であれ、親族承継であれ、社内承継を進める上では大切なポイントが3つあります。

  • 一つ目は「後継者の選定・育成」
  • 二つ目は「社内承継に対する周囲の理解・支援」
  • そして三つ目に「経営権の後継者への移転」です。

実施する内容は単純ですが、進め方を間違うと会社は思わぬ損害を被る可能性があります。

今回は社内承継の後、後継者のもとで将来にわたって円滑に事業運営がなされていくよう、これらの3つのポイントについて解説します慎重に検討しましょう。

誰に事業を継いでもらうか(後継者の選定)

社内承継では、現在の経営者の良く知る人物が後継者にとなります。それゆえにこそ、経営者が後継者を育成することができ、後継者も経営者の意思や会社の状況をよく理解した上で事業を引き継ぐことが可能です。

ここが社外承継、すなわちM&Aによる経営権の売却や社外の専門家に経営を委ねることなどとの一番の違いといえます。

後継者の候補としては、現に会社で働いている役員や従業員、または経営者の親族が挙げられます。後継者は最終的には1人ですので、候補者も1人にとすることが考えられますが、複数を選び育成期間において最終的な後継者を絞り込むこともあり得ます。

候補者を複数選べるかはそれぞれの会社の状況によるでしょう。また、後継者の年齢も問題になり得ます。例えば、ある程度の期間にわたって経営を担うことが可能な一世代下の息子や娘、その配偶者等であったり、役員や従業員の中からでも経営者の同世代ではなく、下の中堅・若手層から後継者を選んだりということもあります。

何より後継者としては「経営を担えること」、「経営者の資質を持っていること」が条件であり、経営者がこの条件に適う者を選ぶことが必要です。

従業員承継のメリット

後継者が会社に在籍する役員や従業員である場合、何より経営者の経営手法や現在の事業についてよく知っていることが後継者にとってのアドバンテージになります。

経営者にとっても、それまで一緒に事業運営に携わってきたわけですから、力量を推し量る上でも育成する上でも、自信をもって行えることでしょう。会社の中で確立している評判や信用が、後継者の強みになることはもとより、周囲の従業員の安心感に繋がるということもあるでしょう。

親族承継のメリット

経営者が創業者である場合、経営者の親族から後継者が出ることは、周囲の従業員の納得感は高くなります。そして、後継者にとってはリーダーシップが発揮しやすい環境を生みます。

後継者が経営者が所有するしている株式を後継者が相続するような場合、株式の所有と経営が一致することで、後継者は強い権限を活かして既定路線にとらわれない、スピード感のある経営判断が可能とになるでしょう。

従業員承継にしろ、親族承継にしろ、社内承継は経営者だけではなく、残される従業員にとっても受け入れ易い事業承継といえるのです。

後継者の考えを確認し、事業承継のタイミングを検討する

そのような社内承継ですが、後継候補者に事業を継ぐ意思がなければ成り立ちません。後継者に後継者であることを意識して準備してもらう意味でも、後継者である旨を伝えるタイミングや社内承継を実施するタイミングは慎重に検討が必要です。

経営者としての育成期間、会社内外での根回しや株式の承継等を考えれば、長ければ数年単位、短くても1年程度の準備期間が必要です。

また、事業自体の好不調や事業環境の良し悪しもタイミングを決める上では重要です。後継者の立場に立てば、事業を承継した途端、事業運営が困難になるような事業承継を避けたいのは当然です。

後継者を育てる

後継者に後継者であることを自覚してもらったら、経営者が考える経営に必要な考え方、知識、スキルを伝えます。ただしかし、会社の経営はなど、人が教えれば、簡単にて出来るようになるものではありません。

経営者としては、会社の将来を任せられると考えた後継者が、事業を継ぐ決心をしてくれた時点で育成の大半は終わっているといっても過言ではないでしょう。

後は、後継者がこれから経営を担っていくという自覚の下、それに相応しく成長できるかです。後継者の育成といっても、経営者は自分のコピーを作るのではないのです。

従業員、顧客お客様、取引先、銀行の理解を得る

後継者が決まれば、従業員、顧客や取引先、銀行等、事業を支えてくれているステークホルダーに周知します。また、経営者が担っていた取引窓口や個別の事業や案件の責任者といった役割を後継者に引き継いでいきます。

その引き継ぎ自体が後継者の育成にもなりますし、それにより周囲は後継者が事業を承継することが分かります。そして、後継者がどのようなタイプの経営者かを理解し、後継者の下での新たな体制が徐々に作られていきます。

従業員の考え、捉え方-従業員承継、親族承継

ここで従業員承継であれば、他の従業員にとっては、これまで一緒に仕事をしてきた同僚がリーダーを引き継ぐため、経営の将来像がイメージでき、理解を得られやすいと考えられます。

逆に、経営者の親族が事業承継のために新たに入社するような親族承継であれば、従業員がそれをどのように受け止めるかは、会社の生産性に直結する難しい問題となります。

現在の経営者には、その親族承継について従業員の理解を得られるよう調整することが求められます。

顧客お客様、取引先等社外の見方

後継者は同様に、取引先等社外からも信用を得ていく必要があります。特に中小企業の場合、経営者が変わることは会社が変わることと同義です。ので、事業承継は社外からも注目されていることを忘れてはなりません。ものです。

会社にとって事業承継は新しく取引を拡大するチャンスでもありますが、これまでの取引を維持できるか試される機会でもあるのです。

銀行の見方(銀行保証)

中でも、事業資金を貸し付けている銀行の見方は慎重です。中小企業であれば、経営者が会社の銀行借入等の保証人になったり、担保を提供したりしているのが一般的です。

銀行は現在の経営者のこれまでの経営実績や保証の内容を踏まえて貸し付けています。後継者はそういった事業債務を経営者から引き継ぐ必要がありますが、後継者が現在の経営者と同等の信用を銀行から得ることは難しいのが実情です。

く、当然、銀行の理解、協力なしでは、債務を引き継ぐことはままなりません。銀行が後継者による個人保証の引継ぎを拒否する、現在の経営者の個人保証を解除しないといった事態もあり得ます。

後継者へ経営権を渡す

事業承継の仕上げとして、経営者から後継者へ経営権を、具体的には経営者が持つ株式を後継者へ引渡します。親族承継であれば、経営者の保有する株式はいずれは親族内で相続されることになるため、どのようなタイミング、方法で株式を後継者に移転していくのか検討することになります。

一方、従業員承継の場合には、後継者が株式を取得しないことも考えられます。現在の経営者が事業承継後も株式の所有を通じて経営に関与したい意向を持っているようなケースや、後継者に株式を取得するだけの資金力がないようなケースです。

後継者が株式を持つことの意味合い

後継者が株式を取得することは、所有(株主)と経営(取締役)の一致であり、その会社において絶対的な権限を手に入れることを意味します。

株式会社では全体の過半数の株式を保有することで社長など取締役の選任が、3分の2以上で会社の合併や解散等の重要事項を決定できます。ので、後継者は株式を持つことにより、誰に遠慮もなく事業運営を進められることになります。

株式移転の方法(生前贈与、相続、売買)、各方法のメリット・デメリットの比較(税務面含む)

経営者から後継者へ株式を移転する方法には、相続、生前贈与、売買の3つがあります。

親族承継で利用される相続や生前贈与は、その際にかかる相続税や贈与税が所得税よりも一般的に高いことがデメリットです。相続税負担は贈与税に比べると若干小さいですが、一時に課税されます。

また、遺言があっても後継者は他の相続人から、兄弟姉妹以外の法定相続人に認められる遺留分の減殺請求を受ける可能性もあります。一方で生前贈与であれば、段階的に実施することで相続税のようなまとまった資金の準備を避けることができます。

主に従業員承継で利用される売買は、後継者が経営者から株式を譲り受け、経営者に対して株式譲渡代金を支払うものです。相続や贈与に比べ税負担は軽いですが、後継者は譲渡代金を個人の信用で調達しなければなりません。

いずれの方法でも株式の評価額は大きな論点になります。中小企業の株式は評価額が高額になることもあり、その分、税負担が重くなります。また、税法上の公正な評価額よりも低い株価で売買した場合は、低廉譲渡でその分の贈与があったものとみなされ、贈与税を負担しなければならないようなケースもあり得ます。

まとめ

社内承継は、後継者を選びその後継者に経営を任せるだけでありと、実施することは単純です。しかし、が、後継者の選定・育成、社内承継に対する周囲の理解・支援、そして経営権の後継者への移転等、事業承継を滞りなく実現するためには、慎重な検討を要するポイントがいくつもあります。

社内承継にどの程度の時間をかけるべきか、どのようなタイミングで実施すべきか、会社や経営者の置かれた状況により変わってきます。

社内承継の検討にあたっては、後継者の有無を含め会社の強みや弱み等、会社の現状を冷静に分析し、正しく把握することから始めましょう。

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